前壽則

晩秋の実
M6
油彩
姫葦
M10
油彩
檜扇
F4
油彩
蕎麦
油彩・和紙・金箔・膠
F0
狐の剃刀
油彩
F6
柚子
M8
油彩・金箔・和紙・膠
石など
16.1×45.7cm
油彩・金箔・和紙・膠
くわい
M8
油彩・金箔・和紙・膠
枇杷
15×35cm
油彩・金箔・和紙・膠
突羽根
P6
油彩・金箔・和紙・膠
枇杷
P6
油彩・金箔・和紙・膠
くわい
SM
油彩・金箔・和紙・膠
檜扇
F6
油彩・金箔・和紙・膠
桜桃
F3
油彩・金箔・和紙・膠
桜桃
F0
油彩・金箔・和紙・膠
姫葦
91.5×40
油彩
丁字
P6
油彩
姫葦
91.5×40
油彩

制作途中、画面がピンと張りつめる瞬間がある。 その時絵の中の空間は閉じ、
色や線は内包され、それ以上描く事をためらう。 実際は、そんな時はめったにないのだが、
その緊張感を求めて描き続けている。
 

 

メディウム、制作年代、制作場所、作風、作家経歴等、前時代的なカテゴリー分けで、判りやすい解釈を求められているようですが、このくくりでは説明不可でしょう。
制作者(及びプロデュースする側の人間)の意識が『現代アート』というものを意識(無意識の意識も含む)して制作していればもうすでに『現代アート』足り得る。

この点を踏まえ、当社は「前 壽則」を『現代アート』作家として皆様に紹介させて頂きます。

いつも申し上げております様に、前の作風は日本的な『わびさび』の世界観を通して、様々なものを問い掛けてきます。

ただし過去を真似てのものではなく、これから何が出来るかを模索する中で最も効果的な方法として、今の作風があるものと捉らえて頂けたらと、これからの更なる進化を標榜している真摯な姿勢を持った作家として理解して頂けたらと、考えます。

有限会社 銀座企画
GalleryUG 佐々木

 

 

絶望の裡に訪れる慰め
前壽則

望みは絶たれ、夢は破られ、企ては挫かれる。信頼は裏切られ、願いは拒まれ、期待は砕かれる。そして、努力は報われず、忍耐は踏みにじられ、誇りは辱められる。

理解者は、どこにも居はしない。軽薄さが人々の心を水苔のように覆っているので、人生は不条理に満ち、過酷で、悲しく、惨めで、侘しく、苦渋に満ちる。人生とはそんな痛ましい思いを引きずりながらただ意味のないことの繰り返しを繰り返すだけだということをとことん思い知らされるためにあるようなものだ。それは風を追うように虚しい。心は泥濘に沈み、或いは砂のように崩れる。

簡単に言えば、これが僕の若い頃から変わりなく持ち続けてきた人生に対する考え方である。本を読み、思い考えて、何とか明るく肯定的になれぬものかとさんざん足掻いて来たが、この悲観的で否定的な考えは些かも変わらぬどころか年齢を重ねるに従ってむしろ深刻さを増してきたような具合である。他人から眺めれば大した経験もしていない者が悲劇の主人公気取りだなと揶揄されそうだが、僕の意識では二十歳の頃からずっとこのような思いを引きずって、嘆息ばかりの日々を何とか過ごしてきたというところである。毎夜々々遅くまで一人で酒を呷っていると、暗澹たる思いが次第にうねりを増して荒れ狂い、突き上がってくる。空虚さが襲い来る。「学生さん、もうどこにも、何処にも行くところがないという意味を、学生さん、お分かりですか」。『罪と罰』のマルメラードフが馬車に轢かれ、泥まみれになって死ぬ前にこぼす言葉。

僕の求めたことや信じたことや願ったことや努力が「絶望」などと、そんな重く揺るがし難い言葉に値するとは、僕も考えてはいない。ドストエフスキーやゴッホの担ったと同じ荷物を背負わされたとしたなら、僕は三日と生きてはいれないだろう。人の担ぎこむ荷物はその人自身が選び取ったものであり、その重さも当人が決めているものである。この夫のせいで私の人生はこんなにも惨めになったという類の、まことしやかな嘘に欺かれてはならない。己の人生は他の誰でもない、自分自身が選び、自分自身が決定してきたのだ。

僕自身が選び取った僕の人生。しかし、そう考えてはみても、覚悟はなかなか訪れない。「人間が軽薄でさえなかったら」。森有正の独白は、人間精神のもうこれ以上に深くは降りていくことのできない果ての悲しみだ。「子供より親が大事と思いたい」。桜桃の種を吐きつつ呟く太宰の言葉。

だが、この暗鬱な遣り切れなさを三十年も味わわされているうちに、絶望のその裡にこそ慰めが訪れて来るはずだという考えが僕の心のうちに少し芽生え始めていることに最近気づかされた。あまり立派で格好の良いことは言うものではないが、薄暮の河原にぼんやりと浮かび上がる枯れた葦や薄の風に揺れている姿を眺めていると、そのような思いが胸を浸してくる。「これで好いではないか。いいんだよ、生きていてもいいんだよ」と、果てしなく高い天から声が聞こえてきそうな気がするのだ。
  


1952年 福井県武生市生まれ 南山大学文学部哲学科卒業
1988年 美浜美術展入賞(1989・1990年同展入賞)
1990年 日仏現代美術展入選
新世紀美術協会展入賞(協会賞 2001年まで毎年入選)
1994年 日仏現代美術展入選・小磯良平大賞展入選
1995年 セントラル美術館大賞展入選
1996年 全関西美術展入賞(佳作賞)
1998年 小磯良平大賞展入選
1999年 花の美術大賞展入賞(スポンサー賞)
個展 ギャラリーG2(福井)
2001年 川の絵画大賞展入賞(佳作賞)
個展 橋本美術(名古屋)
2002年 川の絵画大賞展入選
個展 めいてつMza(金沢)
個展 ギャラリーユニグラバス銀座館(銀座)
2003年 個展 ギャラリーユニグラバス銀座館(銀座)
2004年 個展 ギャラリーユニグラバス銀座館(銀座)
2005年 個展 ギャラリーユニグラバス銀座館(銀座)
2006年 個展 ギャラリーユニグラバス銀座館(銀座)
2007年 個展 めいてつMza(金沢)
個展 ギャラリーユニグラバス銀座館(銀座)現 在 無所属、県美展無鑑査